いいがやクリニック - 目黒区緑が丘、泌尿器科・内科・外科・皮膚科

前立腺がんの遺伝子治療に向けて

2010.11.30UP

過日、目黒区泌尿器科医会において、岡山大学病院新医療研究開発センター那須康友教授にご講演を賜りました。

テーマは、REIC(Reduced Expression in Immortalized Cells)遺伝子発現アデノウィルスベクターを用いた「前立腺がんの遺伝子治療」です。

講演内容は、ホルモン治療で抑えられたがん細胞が再度活性化する「内分泌療法抵抗性再燃前立腺癌」や、がんの場所が局所に限定されている「ハイリスク初発限局性前立腺癌」に対し、この治療が将来有望となるであろう・・・という、たいへん希望の持てるものでした。

現在の内分泌治療抵抗性前立腺癌治療といえば、タキソテールなどの抗がん剤が中心です。また、新たな治療法である分子標的療法も、正常細胞に何らかの副作用が出現するでしょう。

そのことを考えれば「副作用のない遺伝子治療が10年先にも現実化するであろう」というのは、誠に心躍るトピックです。なお、那須教授は、アメリカ泌尿器科学会でこれを発表する前後、すでに特許を申請しているとのことです。

泌尿器科臨床の専門誌に掲載されました

2010.11.12UP

医療関係者向けの専門誌『臨床泌尿器科 64巻11号(2010.10)』に院長の論文が掲載されました。

同誌の特集『外来で行う泌尿器科手術-私のテクニック 』に、『包茎手術』に関する論文を寄稿したものです。

こちらで、その概要をご覧いただけます。
臨床泌尿器科 64巻11号(2010.10)
外来で行う泌尿器科手術-私のテクニック
包茎手術(飯ヶ谷 知彦)
http://medicalfinder.jp/ejournal/1413102130.html

上記の要旨文には少し難解な用語も含まれていますが、いいがやクリニックのホームページに掲載しているコラム「泌尿器科へいらっしゃる前に」でも、医療からみた「包茎手術」の考え方について説明しています。ぜひ、ご一読ください。

熱中症にお気をつけください

2010.08.27UP

今年ほどの猛暑の年は記憶にありません。高温多湿の日本ですから、熱中症にはくれぐれも気をつけてください。

熱中症と呼ばれる以前、この症状は「熱痙攣」「熱疲労」「熱射病」と分類されていました。この中でも「熱射病」は体温調節が利かないほど脱水がひどく(細胞内脱水)、意識障害を伴い死に至ります。水分をよく摂り(できれば体液に近いスポーツドリンクのようなもの)、お味噌汁と水分を十分に補給してください。そして、風通しをよくし、体を冷やすことが予防になります。
高血圧のある方でしたら、スポーツドリンクでなく、通常の水分でかまいません。結果的には塩分制限していることになるので、血圧も十分下がります。

いずれにしても、「熱痙攣」(こむら返りや頭痛など)、「熱疲労」(吐き気、だるさ、頭痛など)は、冷やすこと、お味噌汁、水分を十分に補給することで対処できます。
基本的には、熱中症の本体は「脱水」ですから、目安は「十分に尿の量が確保されているかどうか」です。水分を摂っても、それ以上に発汗していれば尿量は確保できません。血管内脱水から、間質の脱水、そして、最後は細胞内脱水へ移行するのが熱中症なのです。

若い人にたまに見られるのが、果汁飲料の摂り過ぎ(ペットボトル症候群)を原因とする糖尿病と、食中毒を併発した熱中症です。食中毒をおこすと、ただでさえ、下痢、嘔吐のため、脱水になりがちです。そこで、十分に水分が摂取できないうえ、暑いところにいると脱水がひどくなり、熱射病と同様の症状が起きま す。飲食物の賞味期限には十分注意してください。

ところで、熱中症も怖いのですが、クーラーのつけすぎによるクーラー病も実は多く見られます。朝起きると、だるく、頭痛がするといった症状です。また、クーラーで冷やしすぎたための夏風邪も多く見られます。

今年のような暑い夏は、扇風機や冷やしすぎないようクーラーをうまく使って、十分に水分をとって乗り切ってください。

2010年の目黒泌尿器科医会活動について

2010.08.27UP

私も所属しています目黒泌尿器科医会は、年数回の勉強会を行なっています。

これは、目黒区の泌尿器科開業医の先生方、5大病院(東邦大学大橋病院、東京共済病院、厚生中央病院、三宿病院、東京医療センター)の先生方に集まっていただき、その道の第一人者をお招きして、講演をお願いするものです。

本年3月には、藤田保健衛生大学教授 白木 良一先生のご講演を賜りました。先端医療として認可された「前立腺がんに対するロボット支援手術」のポイントを、ビデオを使って丁寧に説いていただきました。
また、前立腺がんの手術法である、従来からの「開腹手術」、その後登場した「腹腔鏡手術」、最先端の「ロボット支援手術」、各々の利点、弱点を解説していただき、私たちもすっきりと頭の中が整理されました。

また5月に、これは目黒区医師会の学術講演になりますが、帝京大学医学部教授堀江重郎先生に「夜間頻尿」の怖さをご講演いただきました。あらためて夜間頻尿と生活習慣病、ストレスとの関連を教えていただき、毎日の診療の一助としている次第です。

この7月には、香川大学医学部教授 筧 善行先生にお越しいただいて、「前立腺がんのPSAスクリーニング」および「PSA監視療法(Active Surveillance)」の70歳以上での有効性を承りました。
PSA(前立腺特異抗原)とは、前立腺細胞に含まれている蛋白分解酵素で、血液中に含まれる値によって前立腺癌の進行度を計る、いわゆる腫瘍マーカーの1つでもあります。
先の「監視療法」は、早期の前立腺がんに対して手術を即断するのではなく、このPSA値の推移を監視しながら経過を見るというもの。ケースによっては、手術など根治治療の時期を延ばせることもあります。あらためて「高齢者は何が何でも手術」という自分自身の認識の甘さに気づき、勉強させられました。

次回は、11月に岡山大学医学部公文裕巳教授に講演をお願いしています。

前立腺がんについては、こちらもぜひご参照ください。

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