肺炎球菌ワクチンの再接種が認可されました
2009.10.26UP
高齢者にとって肺炎は、重症化すれば命に関わる病気です。また、大流行しているインフルエンザをきっかけに、肺炎を起こすことも少なくありません。
高齢者の肺炎の原因で最も多いものの1つが、肺炎球菌への感染。この肺炎球菌による肺炎の重症化を防ぐのが「肺炎球菌ワクチン」です。65歳以上の方には、接種が推奨されています。
肺炎球菌ワクチンの免疫(効果)が続くのは約5年間。従来は再接種すると副作用が発生するとされ、1人1回限りしか接種することができませんでした。
しかし、実際は5年以上経過すれば副作用の影響もほとんどないのです。
そこで、この10月19日より「肺炎球菌ワクチンの再接種」が厚生労働省に認可されました。前回の接種より5年以上の間を空けていれば、2回以上接種できるようになったのです。
ちなみに、この件は新型インフルエンザの対策とともに審議されたようです。高齢者の皆様には朗報ですが、同時に肺炎のきっかけとなりやすい風邪やインフルエンザの予防にもご注意いただければ幸いです。
セックスレスが少子化の原因?日本性機能学会での報告より
2009.09.28UP
去る9月17〜19日、日本性機能学会 第20回学術総会が開かれました。
その中で、文化人類学の森木美恵先生(元日本大学人口研究所、現国際基督教大学准教授)が「少子化の原因」に関して興味深い報告をされていましたので、ご紹介しましょう。
皆様もご存知かと思いますが、結婚率は低下しており、晩婚化も進んでいます。また、セックスレスの夫婦も増えてきています。
今回の森木先生の報告は「セックスレスの多さが晩婚化とあいまって、少子化を加速させている」との内容でした。
欧米では「夫婦単位・カップル単位」で生活をエンジョイしているのに対し、日本では、子供を中心とした「家族単位」で生活をエンジョイするのが一般的です。それによって日本の夫婦は「セックスをしなくとも、生活に満足している」というのです。
また、欧米では婚外子が50%前後を占めるのに対し、日本では2%前後に留まり、それに代わっていわゆる「おめでた婚」が増加しているとのこと。国民性の違いが、家族に対する価値観ひとつをとってもよくわかります。
そして逆の見方をすれば、日本では「子供を授かったのをきっかけに、結婚して "家族になる"」カップルが増えることで、セックスレスが増加しているとも考えられます。
最近、日本では離婚率が増加し38%にもなると言われます。この数字は30代以下の離婚率の高さが押し上げている結果なのです。
おめでた婚やセックスレスとの相関関係は断言できませんが、結婚観・家族観についていろいろ考えさせられる事実ではあります。
もちろん、結婚しても子供が生まれても、セックスレスとは無縁のいい関係を保っている夫婦もいます。
森木先生は「セックスレスにならないためには、子供ができても川の字になって寝ないこと。夫婦だけで寝なければ駄目ですよ」と、強調されていました。皆様もこれを機に「夫婦だけの時間」を見直してみてはいかがでしょうか。
男はつらいよ!? 男女の違いを考える
2009.09.15UP
去る9月4日、以前ここでもご紹介した目黒区泌尿器科医会の勉強会が開催されました。
今回は、川崎医科大学 泌尿器科教室 教授の永井 敦先生をお招きして『男はつらいよ:男女の性機能・脳科学の違い』というテーマで講演していただきました。
永井先生は、心と身体の性が一致しない「性同一性障害(GID)」研究の第一人者で、日本性科学会認定セックス・セラピストでもあります。
また、以前籍を置かれていた岡山大学医学部は、精神科、泌尿器科、産婦人科、形成外科が集まってGID診療を行なう「岡山ジェンダークリニック」で知られています。
GIDというと精神科のイメージが強いかもしれませんが、身体的な部分で泌尿器科も大きく関わります。この講演でも、男女の精神面での傾向の違いから、身体的な違いに至るまで、さまざまなお話を聞くことができました。
ひとつご紹介しますと・・・
『男にとって、ホーム(家庭)は常にアウェイである』というお話。
一般的に女性は「他者とのコミュニケーション」を、男性は「仕事と性的欲求の充足」を得意とし、重きを置く傾向があるそうです。
(ベストセラーになった『話を聞かない男 地図が読めない女』を思い浮かべるとわかりやすいかもしれません)
そう考えると、家庭は家族の「コミュニケーションの場」ですから、奥さんやお母さんといった女性のホームグラウンド。
最近は特に、女性陣相手のアウェイ戦でこてんぱんにされている男性も多いようですし・・・まさに「男はつらいよ」といったところかもしれませんね。
なお、来る9月17〜19日には、日本性機能学会学術総会が開催される予定です。こちらについても、このブログで随時ご紹介していきたいと思います。
豚インフルエンザに関しての取り組み
2009.05.12UP
ついに日本国内での感染者が確認された豚インフルエンザ。現在、WHOの定める警戒水準ではフェーズ5(上位から2番目)とされています。
しかし、比較的毒性が弱く従来のインフルエンザにも近い型であるため、既存の治療薬であるタミフルも十分効果があるといわれています。
鶏インフルエンザの流行を受け、昨年より行政も医師会、大病院とともに対策案を練っていました。そこで今回豚インフルエンザへの対応も早く、各区市町村に設けた「発熱センター」もうまく機能していますし、水際対策も十分な効果が出ているように思われます。
豚インフルエンザばかりが取り沙汰されているようですが、季節性のA型、B型インフルエンザも相変わらず流行しています。今年は5月になっても学級閉鎖が起こっているようです。
豚インフルエンザと鑑別するには、今のところメキシコ、アメリカ、カナダへの渡航歴や、渡航者との接触の有無が鍵となります。
再燃性前立腺癌に対するタキソテール療法
2009.05.12UP
先日、岡山県で開催された日本泌尿器科学会総会へ出席してきました。
そこで、ここでも以前ご紹介した抗がん剤タキソテール(製品名:ドセタキシル)が話題になったのです。
タキソテール投与によって確かに前立腺癌の腫瘍マーカーであるPSAの値は下がりますが、いずれまたPSA値の上昇が見られるようです。
結果として10回以上タキソテールを投与する症例がほとんどであった、との報告が相次ぎ、いずれの段階で投与すると良いのかが検討されました。
目黒区の泌尿器科医療機関で「診療情報の共有」がより進みます
2009.04.06UP
「クリニカルパス」という言葉をご存知でしょうか?
これは、患者さんの診療内容や治療の進め方をスケジュール表のようにまとめたもののことです。
例えば「入院して手術を受ける」としましょう。その病院でクリニカルパスが用意されれば、退院までのおおまかな所要日数や治療内容といった情報を、医療スタッフと患者さんたちが共有できるのです。
もちろん、クリニカルパスで情報を共有できるのは、手術を受けた病院の中だけとは限りません。
泌尿器科の病気について、4月1日より目黒区内の5大病院(東邦大学大橋病院、東京共済病院、厚生中央病院、三宿病院、東京医療センター)と泌尿器科の開業医の間でのクリニカルパスの連携が始まります。
これによって、例えば「退院後、自宅に近いかかりつけの医院で経過を見たい」といった場合にも、入院中にどんなスケジュールで治療を受けていたか、これから気を付けるべき点といったことが、より詳細にかかりつけ医に伝えられるわけです。
まずは「尿路結石の経過観察」、「術後の安定した前立腺癌」、または進行した前立腺癌でも「男性ホルモン依存性、感受性のLH-RH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)に反応のある前立腺癌」などがクリニカルパス連携の対象となります。
普段は通いやすいかかりつけ医のところで様子を見ながら、定期的(6ヶ月〜1年に1度)に大病院でチェックする、その流れをクリニカルパスで共有しようという試みです。希望者のみが対象となりますので、関心のある方はお気軽にお尋ねください。
JSCP(日本クリニカルパス学会)
「概要」の項で、クリニカルパスについて詳しく説明されています。
http://www.jscp.gr.jp/
こどもの包茎、包皮亀頭炎の治療について
2009.03.30UP
今日は、お子さんの包茎治療についてお話ししましょう。
というのも近年、こどもの真性包茎の治療法が変わってきているのです。
従来は手術療法が中心だったのに代わって、ステロイドを塗布する保存療法が主流になってきています。
包皮の口が小さく、針穴ほどしかないものをピンホール真性包茎といいます。排尿すらも困難になることがあり、これまでは手術の対象でした。
しかし、そのピンホール真性包茎だと思われる包皮でも、狭窄部にステロイド(リンデロンVG軟膏)を1日1回、3週間塗布することによって、狭窄が取れて亀頭が80%露出できるようになるとの報告が出ています。
長期的にみた再発率に関してはまだ不明ですが、それでも朗報と言っていいでしょう。もちろん現在では、狭窄が解消しない時に初めて手術を施します。
また、こどもの包皮の先が垢や細菌に感染して炎症を起こす包皮亀頭炎も、従来は膿を出すために包皮を剥いて治療していました。
かわいそうに、泣いているこどもを押さえつけて、包皮を剥いたりもしたのです。
しかし現在は無理に剥いて膿を出さずとも、抗生剤の投与で炎症を治めた後に、上記と同じステロイドの塗布を行い、自然に剥けていくか確認する方法が主流です。
これには、こどもの包茎治療という分野自体の考え方が大きく変わってきたこともあります。
生活面での困難さえなければ、こどものうちに無理して包皮を剥かず、思春期に自然と剥けてくるのを待ったほうがよいという発想になったのです。
目黒区泌尿器科医会について
2009.03.03UP
昨年より「目黒区泌尿器科医会」が正式に発足いたしました。
目黒区泌尿器科医会は、年3回の勉強会を行なっています。
目黒区の泌尿器科開業医の先生方、5大病院(東邦大学大橋病院、東京共済病院、厚生中央病院、三宿病院、東京医療センター)の先生方に集まっていただき、その道の第一人者をお招きして、講演をお願いするものです。
昨年は、以下のようなテーマで実施いたしました。
3月 帝京大学 堀江教授 『生活習慣病とαーブロッカー』
6月 東京大学 中川助教授 『限局性前立腺癌に対するIMRT療法(TomoTherapy)』
9月 千葉大学 鈴木助教授 『再燃性前立腺癌に対するドセタキシル療法』
11月 東京女子医大東病院 巴先生 『混合性尿失禁の治療成績』
また本年は、以下のようなテーマを予定しております。
3月 東京医大 中嶋助教授 『前立腺癌(題名未定)』
6月 近畿大学 植村教授 『腎癌の分子標的療法(題名未定)』
なお、世話人は昨年、今年と私、飯ヶ谷が担当しています。
進行腎癌の新たな治療薬について
2009.03.03UP
進行腎癌の治療法に、分子標的治療というものがあります。特定の分子を標的として、その機能を抑えることで治療するものです。
以前は海外でのみ実施されていた治療法ですが、その海外での奏功率の高さから、日本でも大学病院を中心に実施されるようになりました。
具体的には、分子標的薬と呼ばれる、スーテント、ネクサバールといった経口薬を投与します。
奏功率が高いのは先にも述べましたが、副作用としては、膵炎、高血圧、皮膚症状、場合によっては脳出血などが報告されています。
ご興味のある方は、来院の際にお尋ねください。詳しくご説明いたします。
EDの診断・治療について
2009.01.21UP
このブログをご覧の方から、下記のようなお便りをいただきました。
『EDではないかと悩んでいます。60歳ですから、それなりなのかもしれませんが、性的刺激を受けても勃起せず、夫婦の営みもできません。男性更年期なのか、今飲んでいる薬の影響なのか、よくわかりません。先生のクリニックで原因を調べていただけますか。』
もちろん、当院でもEDに関するご相談を承っています。
参考までにお話しすると、EDの原因の多くは加齢と薬剤の副作用です。特に、胃腸薬の副作用が多く報告されています。
ただし、すべての方がそうだというわけではありません。他の病気の兆候として現れることもあります。
いずれにしても、まず専門家にご相談なされば安心かと思います。
当院はED治療も行なっておりますし、内科の治療経験も豊富ですので、ぜひ一度お越しください。